1. 自己紹介
平野貴大(Takahiro HIRANO)
社会福祉法人ニライカナイ 法人本部事務局 DX・IT担当
社会福祉士・公認心理師
立教大学コミュニティ福祉学研究科博士後期課程 単位取得退学
修士(社会福祉学)。専門は福祉情報学、コミュニティ心理学。福祉分野における情報化と多職種の連携についての研究を行っている。

2. 序文(背景)
多様な課題を抱えている児童たちの支援の場面では、従来の学校の担任だけで対応するのは限界があります。また、教員の負荷を軽減する観点からもチーム学校として、複数の専門職が連携して児童・生徒の支援に関わる多職種連携・協働が実践されるようになっています。しかし、多職種連携や協働に必要な能力が何かが明確にされていません。
そのため、本研究では、多職種連携教育を行う際のルーブリック作成を通じて、多職種連携・協働でどのような技術や能力が必要か検討を行いました。
このルーブリックとは、2000年頃からアクティブラーニングの中で求められる能力(パフォーマンス)の質を段階的、かつ多面的に評価するための基準、いわゆるパフォーマンス評価のツールです。
単純な〇と×では評価が難しいレポートなどの課題の評価において、評価のポイントとそれぞれの基準を明示することによって2つの効果があるとされています。
一つは、複数の評価者が担当した場合でも、基準が明示されることによって評価者間のブレを回避できることです。もう一つの効果として、評価を受けた学生に対して、それぞれの達成状況と課題について具体的に理解し、次の学習に繋ぐことが可能になります。
大学教育で作成されるルーブリックの場合、それぞれの評価項目に対し、入学時点または授業を受ける前、授業を受け始めた段階、授業内容を理解した段階、授業内容を理解し実践できる段階として評価基準を作成することが多いかと思います。
3. 研究内容
(ア) 研究の概要
本研究では、学校領域に関係する多職種連携の実践現場で勤務している心理職複数名とワークショップ形式で多職種連携の現場で必要な能力と具体的な技術についての意見交換を行いました。その結果を踏まえて、学校現場における多職種連携で必要な能力(評価ポイント)と獲得すべき技術(評価基準)を整理しルーブリックを作成しました。そのうえで、医療分野での多職種連携に関するルーブリックと比較し、その特徴があるのか検討を行いました。
(イ) 他職種との連携や協働に必要な技術とは何か
まず、ワークショップの議論で出てきた項目は以下のものになります。

他の専門職との連携をしていくためには、次の3つの能力が大きなものとして必要になると考えられます。
・専門性と関連する知識 自他の専門性理解をすること
・多職種連携のための技術 コミュニケーションをとって、協働すること
・環境の理解 職場の環境を理解し、俯瞰的に状況を把握すること
この内容については、医療関係の多職種連携教育に関するルーブリックとも類似していることが確認でき、ある程度の汎用性を持ったものであると考えられました。
4. 実践へ
この内容を踏まえて、この知見を学校以外の場面での応用を考えていきます。
(ア) ポイント
下の図は、上記ルーブリックの話を発展させた、教育プログラム実施を受講した学生の学習内容の分析となります。

この図は社会福祉士養成課程の学生が、多職種連携のプログラムを受講した際の振り返りで記入したシート内容をまとめたものとなります。先ほどの3項目の中で、他職種の専門性の理解に関して考えることが多かったという結果が出ました。
つまり、他の職種を知らないと、連携をするのが難しいということが学生の段階でも気づいています。他職種を知るということが連携をする中で大きなポイントになると言えるでしょう。
(イ) 具体的方法
では、具体的にどうしたらいいのでしょうか。
餅は餅屋という言葉があるように、それぞれの職種が得意な業務をできるように、お互いの専門性を知ることが第一歩になります。
そのためには、それぞれの専門職の全てを知ることは難しいですが、まず、その職種の得意な範囲、守備範囲となる部分がどこなのかを知ることから始めてみてはどうでしょうか。
5. 結論:ジョブ型雇用が推進される中で
近年、ジョブ型雇用として、企業側で明確な職務(ジョブ)を定義し、その職務に合致する技術や経験を持つ人材を雇用するケースが増えてきています。
しかし、企業としてジョブ型雇用をしても、配属された部署内でその人の専門性などを理解されないと、「この人はなんで自分の部署にいるのだろう?」、「自分が何を求められてこの部署に配属されたのだろう」というネガティブな考えに陥ってしまい、それぞれの持つ技術や経験を発揮できないリスクがあります。
この状況が続いてしまうと、エンゲージメントの低下を招くだけでなく、チームが機能不全になるリスクを抱えることになります。このリスクを回避するためにも、それぞれの専門職がどんな職種で、何ができるのか、今の職場で何が求められているのかをしっかり把握し、部署で情報共有をしていくことが重要になるでしょう。
6. 引用・参考文献
平野貴大,心理職の多職種連携教育に関するルーブリック作成の試み:日本コミュニティ心理学会第22回大会 自主ワークショップでの取り組みより,コミュニティ心理学研究23 巻 1 号 p. 15-21, 2019 年9月
平野ほか,チーム学校の実現に向けた4 職種合同多職種連携 教育 プログラムの試行について―社会福祉士養成課程における学生の学び,日本教育心理学会第64回総会発表論文集 2023年9月
