多様化する専門職をどうマネジメントする?-専門職のポートフォリオ化とフォロワーシップ行動の視点から-(同志社大学大学院 博士課程 岡田 麻紀さん)※2025年HR Buddy研究助成支給者


岡田 麻紀

【プロフィール】
・2024年9月 関西学院大学大学院 経営戦略研究科 経営戦略専攻 専門職学位課程 修了  経営管理修士(専門職)
・2025年4月~  同志社大学大学院 社会学研究科 産業関係学専攻 博士後期課程 在学中
・所属学会 経営行動科学学会、日本労務学会

専門職学位課程においては、URA(University Research Administrator)のマネジメントに関する課題研究に取り組みました。現在は博士後期課程に在籍し、フォロワーシップ行動を理論的枠組みとして、企業等で働く専門職を対象とした人的資源管理の研究を行うとともに、その実務への応用を追究しています。


専門職の多様化
いち早く専門職として社会的認知を得たのは,医師,弁護士,聖職者などの「伝統的専門職」でした。その後,社会の変化,業務の高度化により,専門職が対象とする職種の範囲が拡大し,近年では,幅広い職種が「専門職」と呼ばれるようになりました。

専門職と組織の関係性変化
専門職と組織の関係性も変化し,個人で独立して業務を遂行してきた専門職が組織に所属するケースが増加しています。

太田(1992)は,専門職の組織化の理由として,質の高いサービスを求めるクライアントの要請に応えるため専門分化が進んだこと,またそれにより,高度かつ体系的なサービスを提供し,効率的なサポートを得る必要性が生じたことを挙げています。

このような,専門職と組織との関係性変化,また,先ほどの専門職の職種の広がりを踏まえ,今後,組織は専門職に適したマネジメントを実践する必要があります。

そのために,「専門職のポートフォリオ化」と「フォロワーシップ」の2つの視点が手掛かりになると考えています。

第1の視点「ポートフォリオ化」
一つ目の視点は「ポートフォリオ化」です。
専門職に適合するマネジメントに向けて,まずは,対象である専門職を包括的に把握することが起点となります。具体的には,専門職の特性に基づく人材ポートフォリオを構築し,体系的な整理を行うことが有効であると考えます。

我が国における人材ポートフォリオの嚆矢は,1995年,日本経済団体連合会により示された「新時代の日本的経営」です。この枠組みは,主に就労形態に焦点を当てたものであり,専門性の違いに基づいた分類はなされていません。

私の研究では,Davenport(2005,邦訳2006)をもとに,図表1の専門職の組織行動分類を検討しています。

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図表1 専門職の組織行動分類
出所:Davenport(2005, 邦訳2006)を参考に筆者作成

横軸は,「業務の反復性の程度」,つまり,過去に構築した手順・判断が繰り返し適用可能であるかどうか,としています。反復性が高い業務は,体系化されたプロセスに基づき遂行されます。一方,反復性が低い業務は,都度の判断・調整を要します。

縦軸は,組織との関係をより明確に示すため,専門職が組織において自律性を発揮する程度,つまり,組織重視か,個人重視かを示します。

四象限の右下の「自律推進型」専門職は,業務の反復性が低く,かつ個人の裁量が大きい領域で活動する職種です。これらの職種は,専門性に基づく独立した判断を行い,組織に依存せずに業務を遂行する傾向が強いです。組織において,専門性に依拠した強い影響力を持ち,他職種と協働する場面で,強いリーダーシップを発揮することが多くあります。業務遂行において大きな決定権を有し,組織や他の成員からの制約は限定的です。同じ事象を取り扱う場合でも,専門職個々の判断により業務遂行方法が分かれます。

右上の「共創型」専門職は,チームで働くスペシャリストです。業務の反復性が低く,他の成員との協働を重視して業務を遂行します。業務遂行において,状況に応じた解釈・判断が求められることが非常に多いですが,個人の判断ではなく,組織や他の成員との意見交換・議論を踏まえた合意形成により対応を行います。専門性を持ちながらも,チームの一員としての自らの役割を重視し,協働により業務の完遂を目指す点が特徴的です。

左上の「規範基盤型」専門職は,業務の反復性が高く,組織との関係性も強いです。体系的に確立された業務フローに従って,再現性の高い専門業務を組み合わせることで,組織として安定的に成果を出すことが求められる職種を指します。規範基盤型の業務遂行において,個人の裁量よりも組織的な運用が優先される傾向があり,他の成員との協働の場面も多いです。

オペレーション型専門職は,就業の前提として高度な職業訓練を必要としない場合が多く,長期の勤務経験を通じて業務に習熟し,部門特有の暗黙知を蓄積することで固有の知識を形成します。部署異動が少なく,特定の業務領域に継続的に従事することで,年数を経るにつれて特定業務に精通し,他の成員から専門職として認識されるようになります。我が国の複線型人事制度における専門職系列の人材に多く見られるタイプです。

第2の視点「フォロワーシップ行動」
二つ目の視点は,専門職のフォロワーシップ行動です。従来,組織におけるマネジメントは,主な構成員であるゼネラリストを前提として設計されてきました。また,知識や経験豊富なリーダーがフォロワーを教え導くスタイルで,リーダー視点での行動理論が主流でした。

しかし,太田(1999)は,リーダーシップの理論が理想とする行動は,所属組織よりも自分の仕事にコミットし仕事をとおして主要な欲求を充足する「仕事人」に適合しない可能性が高いと指摘し,リーダー視点のマネジメントが専門職に適しない可能性を示唆しています。個々に特定分野の知識や経験を有する専門職のマネジメントには,従来の「リーダー視点」よりも,「フォロワー視点」の運用が適するのではないでしょうか。

3次元モデルでフォロワーを理解する
フォロワー理解のために有効な理論として,松山(2023)は,受動的忠実型,能動的忠実型,統合型を組織に貢献可能な行動であるとし,フォロワーシップ行動の3次元モデルを示しています(図表2)。

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図表2 フォロワーシップ行動の3次元モデル(松山 2018,2023)
出所:松山(2018,2023)をもとに筆者作成

※統合型が「カーステンたちのいう,プロアクティブフォロワーに対応している(松山, 2018, 120頁)」こと,「プロアクティブ型行動は統合型行動と呼んでいいのではないか(松山, 2023, 91頁)」とされていることから,図表2のプロアクティブ型の横に,統合型を括弧書きで併記している。なお,本記事においては,統合型とプロアクティブ型は同一のものとして取り扱い,記載を統合型に統一している。

フォロワーシップ行動の3次元モデルのうち,左の受動的忠実型は,上司からの指示命令を素直に受容し,そのままそれを実行します。上司を通じて,間接的に組織目標に貢献するのであり,組織への直接的貢献はほとんど意識されません。

中央の能動的忠実型は,上司に対してのコミットメントを有しながら,組織や職務目標を意識し,組織目標に対する直接的貢献を目指します。上司からの指示命令に対し違和感を覚えているにも関わらず,上司から意見を求められない限り異を唱えることができず,ストレスを抱え込みやすい特徴を有しています。

右の統合型は,上司に従い貢献するとともに,組織目標の先にある社会的価値までを見据え,組織に対して直接的に貢献します。

基本的に,新しく組織に参入した時点では受動的忠実型で,勤務経験を積むことにより,組織への貢献度が高い能動的忠実型,次に統合型へ,段階的に移行するものとされています。

専門職特有のフォロワーシップ行動の把握に向けて
専門職については,組織への参入当初から即戦力となることも多く,この場合,業務の未習熟を理由として受動的忠実型および能動的忠実型の発達段階を経る必要性がありません。

また,専門職の業務範囲は,組織改革や職務再設計があった場合などを除き,基本的には固定されています。

このため,年数を経ても仕事のスタイルや組織との関わりが変化しない可能性があります。

専門職のフォロワーシップ行動は,本研究において構築する専門職の組織行動分類に大きく影響されるものと考えます。今後,実証研究により実像を明らかにした上で,論文投稿を行う計画です。

謝辞
最後になりましたが,このたび,一般社団法人HR Buddy研究所様の助成をいただいたことが研究の励みになりました。ご関係者の皆様方に心より感謝申し上げます。

参考文献
Davenport,T.H., Thinking for a Living, Harvard Business School Press, 2005.(藤堂圭太訳『ナレッジワーカー-知識労働者の実力を引き出す経営-』ランダムハウス講談社,2006年)

松山一紀『次世代型組織へのフォロワーシップ論:リーダーシップ主義からの脱却』ミネルヴァ書房, 2018年.

松山一紀『フォロワーシップ行動論:「こと・ば」と言葉』中央経済社, 2023年.

太田肇「プロフェッショナルのマネジメントに関する研究:組織と個人の統合についての実証分析」『経営行動科学』7(1), 1992年, 31-39.

太田肇『仕事人 (しごとじん) と組織:インフラ型への企業革新』有菱閣, 1999年.


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