【開催報告】「AI時代に求められるエンゲージメントとは― 人と組織の変化を読み解く ―」を開催しました


2026年9月3日(木)、一般社団法人HR Buddy研究所は、無料オンラインセミナー「AI時代に求められるエンゲージメントとは― 人と組織の変化を読み解く ―」を開催しました。

本セミナーでは、HR Buddy研究所 主任研究員の南 遥夏さんが登壇しました。

AIによって働き方や仕事の役割が大きく変わる中、従業員のエンゲージメントにはどのような変化が生じるのでしょうか。当日は、エンゲージメントを生み出す科学的なメカニズムやAI利用に関する最新研究を紹介するとともに、自社の組織状態を正しく把握し、より効果的な施策につなげるための組織分析について解説しました。

AI時代だからこそ、「人への投資」が競争力に

AIの進化は、定型業務の自動化や情報処理の高速化をもたらす一方で、「人間ならではの役割」や「仕事の意味」を改めて問い直す変化でもあります。

AIの活用によって心理的な余裕が生まれる人がいる一方、役割への不安や疎外感を抱いたり、自分の仕事の意味が揺らいだりする人もいます。つまり、AIが従業員に与える影響は一様ではありません。

セミナーでは、AI時代だからAIだけに投資するのではなく、AI時代だからこそ「人への投資」が企業の競争力になること、そのためには、環境変化が従業員に与えている目に見えない影響を把握する必要があることをお伝えしました。

エンゲージメントを生み出すメカニズム

ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素で構成されます。

待遇や職場環境への満足を示す「従業員満足度」や、組織への帰属意識を示す「組織コミットメント」とは異なり、仕事そのものにエネルギーを注ぎ、意欲的に取り組んでいる状態を表します。

当日は、エンゲージメントが生まれる仕組みを説明する「仕事の要求度―資源モデル(JD-Rモデル)」を紹介しました。

過度な業務量、時間的な切迫感、役割の葛藤、対人関係の摩擦などの「仕事の要求度」は、従業員のエネルギーを消耗させ、疲弊やバーンアウトにつながる可能性があります。

一方、仕事の裁量、上司や同僚からの支援、適切なフィードバック、キャリア機会などの「仕事の資源」は、エンゲージメントを高めるだけでなく、仕事の要求度による疲弊を和らげる防波堤としても機能します。

また、希望、自己効力感、レジリエンス、楽観性といった「個人の資源」や、従業員自身が仕事の進め方・人間関係・仕事の捉え方を工夫する「ジョブ・クラフティング」についても紹介しました。

エンゲージメントは、本人の気合いや福利厚生だけで決まるものではありません。組織が適切な資源を整えることに加え、従業員自身が仕事へ能動的に働きかけられる環境をつくることが重要です。

最新研究から見えた、AI利用の「二面性」

セミナーでは、AI利用とワーク・エンゲイジメントに関する最新研究を紹介しました。

AIの利用によって、仕事に取り組むための心理的な余裕が生まれ、エンゲージメントが高まる可能性が示されています。その一方で、AIが本人にとって重要な仕事を大きく代替する場合には、仕事からの疎外感が高まる可能性も指摘されています。

また、AIとの能動的な協働を新たな「仕事の資源」として捉えた研究では、AIとの協働が「仕事の意味」や「創造的自己効力感」を高め、それらを通じてワーク・エンゲイジメントにつながることが示されています。

さらに、AI利用と従業員の創造性との間を、ワーク・エンゲイジメントがつないでいる可能性を示した研究も紹介しました。

これらの研究から見えてくるのは、AIを導入したり利用したりするだけで、自動的にエンゲージメントや創造性が高まるわけではないということです。

重要なのは、「AIを利用しているか」だけではなく、その環境の中で従業員が仕事をどのように捉え、どのような心理状態で働いているかを理解することです。

施策の前に、自社の状態を正しく診断する

同じように「離職率が高い」「管理職が疲弊している」という問題が生じていても、その背景にある原因は企業や部署によって異なります。

仕事の資源が不足している場合もあれば、マネジメントの問題、心理的安全性の欠如、AI導入による役割不安などが影響している場合もあります。

原因を把握しないまま、「交流を増やそう」と社内イベントを増やすと、従業員にとって新たな心理的負担や時間的拘束になる可能性があります。また、「部下に寄り添おう」と1on1の回数を一律に増やすことで、管理職の業務負担が増え、面談そのものが形骸化することも考えられます。

主観的な判断だけで施策を選ぶと、本来の課題と施策がずれてしまう可能性があります。施策を実行する前に、自社の従業員に何が起きているのかを正しく把握することが重要です。

サーベイスコアの背景にある「課題構造」を読み解く

エンゲージメントサーベイなどで得られるスコアは、組織の状態を表す「結果」の一つです。数値の高低だけを見ても、その背景にある原因までは分かりません。

セミナーでは、従業員が「今、どのように感じているか」を表すサーベイなどの主観データと、勤怠、人事評価、昇進・異動履歴、スキルや経験などの客観データを組み合わせて分析する重要性を紹介しました。

複数のデータを掛け合わせることで、離職リスクに関連する特徴や、成果を上げている従業員に共通する心理的・環境的な要因など、単一のデータだけでは見えにくい組織固有の構造を捉えられる可能性があります。

データは、経営・人事・現場が組織の状態について同じ目線で話し合うための共通言語でもあります。感覚的に「現場が疲れている」と捉えるだけでなく、「どの部署で、どのような要因がエンゲージメントと関係しているのか」という仮説を示すことで、対話を一歩深めることができます。

分析を、組織改善の「次の一手」につなげる

HR Buddy研究所では、企業がすでに保有している勤怠・評価・属性データなどを整理し、複数のデータを掛け合わせながら、組織課題の背景にある要因を分析しています。

分析結果から課題と優先順位を整理し、実行可能な施策やアクションをご提案することで、「測って終わり」にしない組織分析を目指しています。

また、初回分析で把握した重要指標の継続的なモニタリング、必要に応じたサーベイやインタビューによる追加分析、施策実行後の効果検証を通じて、「分析・施策・効果検証」のサイクルを支援しています。

これからのエンゲージメントを研究・実践の両面から探求

セミナーの最後には、HR Buddy研究所が研究開発を進めている「階層型エンゲージメント診断(LEA)」についても紹介しました。

LEAでは、従業員がエネルギーを注ぐ対象を「個人・タスク」「チーム」「組織」の3つに分けて捉えます。エネルギーがどこに向けられているかを可視化することで、それぞれの組織における施策の優先順位や、具体的な介入ポイントを検討するための手がかりを得ることを目指しています。

HR Buddy研究所では、今後も研究開発、学びや知見の発信、組織分析・研修・組織開発支援を横断しながら、AI時代における人と組織のより良い関係を探求してまいります。

今後のセミナーや研究会については、詳細が決まり次第、当ホームページでお知らせいたします。


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ご希望に応じて、サービス内容や研究成果の資料提供、個別相談に対応いたします。

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